森岡督行『荒野の古本屋』・ジュエリーデザイナー ひろさんオススメ

おすすめ本 File 087
「20代の、モラトリアムに悩む人たち」へ

ひろ

087kouya

この本、実はシリーズタイトルが「就職しないで生きるには」です。
今の若い皆様が就職する事に苦労しているのは重々承知ですが、
でも、こんな働き方(=生き方)もあるんだよ。ということで
今回こちらをオススメさせていただきます。

このタイトルにある古本屋というのは東京茅場町の川沿いに立つ古いビルの中にある森岡書店です。
古い写真集や写真家の自費出版本、そしてギャラリーのある書店です。
この森岡書店の店主が、大学を卒業してモラトリアム期を過ごし、
有名古書店で働き、一念発起して自分の店を持つなかで、
社会と距離をとっていた著者が自ら社会に近づいてゆく。
それが終始一貫した古い本と古い建物への愛情とともに語られています。

お金の問題、古書店の裏側、本マニアの人達の話。
興味深い箇所は沢山あるのですが、
私はこの限りなくノンフィクションに近いこのお話が、
古い建物にある「石炭置き場」というキーワードによって、不思議なフィクションの世界に送り込まれる感覚に
大変面白みを感じました。

そして、モラトリアムであった頃に彼はちょっと普通では考えられないような過ごし方をしてるのですが、
これは読んでのお楽しみに。
読んでいて思ったのは、そういうモラトリアムの頃の体験は本当にかけがえのない貴重な経験だということ。
それは後になってでしか実感できないものかもしれないけれど。

ピンチが何度もありつつも、いつもなんとか切り抜けている著者ですが、
読み終わってみると、生きていく上で大切なものが浮かび上がってきます。
私にはそれが「想像する力」「肚をくくること」「心のトビラを開けておくこと」のように感じました。
人生ままならないことはいつでも起こりえます。
でも上の三つを思い出せば、なんとか、なんとか乗り越えていけるんじゃないか、
そんな風に思わせてくれました。

気が向いたら是非森岡書店へどうぞ。
東京で、あの貴重は空間を維持していくこと、それは大変なことだと思いますが、
私がそこに身を置くたびに感じるゆとりと落ち着き、そして静かな時間。
まさに本を眺めるにピッタリな・・・
それは著者である店主の強い思いのおかげなのです。

 

ひろさんのプロフィール

ひろ
ジュエリーデザイナー
美大を卒業後、デザイン会社に勤務。独立後ジュエリーの勉強をしHIROKUとして活動中