小川彌生『きみはペット』・会社員 オクガワチカさんオススメ

おすすめ本 File 078
「20代のここではないどこかで働きたい人たち」へ

オクガワチカ

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主人公のスミレは高学歴、大手新聞社勤務、自身で購入したマンションに住まうクールな美人。恋人は大学時代に好きだった先輩(職場で再会)。
ある日、マンションに捨てられて(?)いた男の子を拾い、ペットとして同居(ペットなのでエッチはナシ)を始めるというある種の少女マンガらしいファンタジー入ったラブコメです。

とてもネガティブ思考で、泣き虫で、弱っちくて、感情を素直に表せず、他人と関わることが下手なのに、見た目はいわゆるスペックのいいアラサーの強面美人とくれば、たびたび職場であらぬ誤解を受け、孤立します。
その都度うまくやろうと、がんばっては空回り。ひとり泣き帰り、言葉の通じるペットに感情を吐き出し、意外と世間がやさしいことに気づき、自分も周りに少しやさしくなります。

そして実はコツコツと自らの仕事を全うしていることを、周りはちゃんと見ているのです。それは新しいポストに就くことや、仲間と和解することで答えが出ます。
終盤に上司が、テレビに映るイチローのような選手を指し「ふつう人間は勝ってると慢心するし ひどく負けると くさって仕事は雑になる でも一流の選手は常に淡々とベストを尽くすものだよ きみもそういうことができる人だ」とスミレの背中を押しました。
まぁ、現実にはちゃんと伝えてくれる人は少ないかもしれませんが…。

スミレが職場で悔しい気持ちのときに「別に一生あいつに邪魔されるわけじゃない 大事なのはいい仕事をすることで…」と言うシーンがあります。このセリフは「望んだ場所じゃないから、これは私がする仕事ではない」「ロクな上司(または同僚)がいない」と思いそうなときに、目の前にある仕事にきちんと丁寧に向き合わなくては、と目覚めさせてくれました。
とりあえず目の前のことを終わらせて、それができていれば認めてもらえる。そして次が来るのだと気づき、小さな自信を積み重ねてきました。

私がこれを何度も読んでいた20代の頃は、働く女の子ががんばってシアワセに恵まれるお話だと思ってました。
30代も後半になり最近読み返してみたら、思っていたより職場や仕事に悩むエピソードは少なく、恋や自分に悩んでいる方が多かったのでとても不思議です。
小さなことで泣いたり怒ったり悩んだり、ひとりで会話シミュレーションしてみたり、出かける服が選べない「会社行きたくない病」にかかったりしていたスミレに、何かうまくいかず悩む自分を映していたのでしょう。

ぐるぐると悩んでいるときには、一緒に悩んでるような(でもできれば笑える)お話もよいかと思い、オススメします。

 

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