西原理恵子『上京ものがたり』・地方公務員 成瀬幸子さんオススメ

おすすめ本 File 079
「20代の一人でいることが不安な人たち」へ

成瀬幸子

079joukyou

 この本は、毎日新聞日曜版で連載中の「毎日かあさん」の作者の西原理恵子さんが、自身の体験をもとに、高知の私立高校を退学、養父が自殺した直後、大学入学のため上京し、仕事を得るまでを描いた作品です。  
 この本を読んだとき、学生時代の自信のない、一人になることが怖くて誰かといつも一緒にいられるようにビクビクしていた自分に。そして、素敵な恋人ができなかったらどうしよう、結婚できなかったらどうしよう、と不安で自分の意見も言えず周りに振りまわされ、みんなと同じでいられるように、目立たないように、でも乗り遅れないようにと、不安で孤独だった自分自身に
 「信じられないと思うけど、あんたの人生これからどんどん楽しくなるよ、若くて、美しい時を過ぎたとしても、ずっと楽しく生きられるよ」
って伝えてあげたい。そんな気持ちになりました。  

 この物語の主人公は立派な人ではありません。
 上京してアパートの一人暮らしを始め、学業もイマイチぱっとせず、なぜか働かない男と同棲したり、時給のいいアルバイトということで、ミニスカパブでバイトをしたりと、この春お子さんを都会に送り出した親御さんからしたら目を覆いたくなるような生活の部分もあります。
 それでも、彼女は生活するためのお金を得るために働きます、そこで出会う人たちの言葉に励まされたり、納得させられたり、うちのめされたり、あるいは自分とイケてる人との格差を感じたりしながら、自分なりに工夫しかっこ悪くても、みっともなくても、少しずつ前に進みます。
 やがて仕事が軌道にのり、彼女が幸せだと感じたことは、お財布の中身を気にせずスーパーで買い物すること、年に何回か回らないお寿司を食べにいけること。お風呂付きの広いアパートに引っ越すこと。と、なんでもないことのようにも感じられます。
 彼女は仕事があるということは、働けるということは、お金が入ってくるというだけでなく、誰かが自分の仕事に感謝していてくれるから、お金が入ってくる。田舎の高校中退の何者でもなかった存在に、ありがとうとお金をくれる人がいることが、とてもうれしくて幸せなことだということを知ります。

 あなたがもしも、今、自分に自信がなくて自分の将来に不安を感じているのなら、まず働いてみませんか、かっこ悪くたって、しんどい仕事だっていいじゃないですか、そして働き続けながら、自分が一番輝く場所を見つければいいじゃないですか。
 一歩を踏み出したその先で、あなたもきっと「しんじられないと思うけど、あなたの人生これからもっともっとたのしくなるよ。」って今の自分に伝えたいと思うはずです。

成瀬幸子さんのプロフィール

成瀬幸子
地方公務員