細川貂々『どーすんの?私』・フリーランサー はすぬま がまよ さんオススメ

おすすめ本 File 063
「20代の悩み多き人たち」へ

はすぬま がまよ

062dosunnno映画化もされた「ツレがうつになりまして。」シリーズ、略して「ツレうつ」で有名な細川貂々さんのこちら「どーすんの?私」をオススメします。

進路が決まらないまま高校を卒業。自宅でテレビをみながら引きこもっていた貂々さん。なんとか職にありつき続けようとガンバルのですが、接客でつまづき、人間関係に疲れつまづき、転職を重ね、「自分はなにやってるんだろう」と自問する日々。そこから「絵をやりたい」と絵の学校へ入学するまでのお話が描かれています。

ほんとうにね、この本の中の貂々さんってばダメダメで……。「こんないい加減な人が!」みたいにレビューで思わず怒っちゃってる人もいるぐらい。だけど、こう言っては何ですが、真面目にやったからといって人生が上手く行くとは限らない。貂々さんが働く中で出会う様々なことに、真面目に立ち向かい耐えていたとしたらどうなっていたか……なんてこれもまたわからないこと。
そして、貂々さんが絵をやろう!と決めたのも、そういえば絵がずっと好きだったと「ぽとり……」と気付きが落ちてきたように描かれていて、こちらも努力や真面目さは関係ない。

貂々さんなんて、コミックエッセイが映画にもなって、書店には沢山の本が並べられていて、そんな人でも迷うときはこんなもんだし、ダメなときはこんなにダメなんだ〜!って思ってちょっと肩の力を抜いてみるなんていう読み方ではいけないでしょうか(笑)。

まあ、それはさておき。私がこの本を読んでグッときたところは、ストーリーそれ自体よりも、貂々さんが時を経て、目を三角につりあげて家族にやつあたりする姿や、きちんと就職をした友人への劣等感抱くかつての自分自身の姿を醜く描いていたということ。

「何かに一生懸命になりたいのにそれがみつからない私」「友人と距離を感じて孤独感を感じる私」そんなものはいくらでも美化して描けるだろうに、「なんかちょっとくるしいな…」と読者である私が感じるぐらいに、貂々さんはその時の貂々さん自身のダメさ加減をきっちりと描いているように思えました。もちろん、そこをやるのが「プロ」なのでしょうが、それでもやっぱり自分と向き合うってすごいことだなっておもいます。

自分に酔わなきゃ出来ないこともあれば、自分に酔っていたら出来ないこともある。何かに突き進む時は自分に酔ってもよい「ノリ」がでるのかも知れませんが、良くない状況で自分に酔っても、それは底なし沼。メランコリックにいい訳をし続けるよりも、今自分はダメなとき!と認めてしまったほうが自分を肯定できそうです。ほら、貂々さんだってこんなにダメだったんですし、きっとまわりにもダメダメさんはいっぱいいるはず。ダメなのはダメだけど、ダメでも仕方ない時がある…!

Amazonの内容紹介では「大爆笑自伝コミックエッセイ」とありますが、私とってはけっこうしんみりしたりぐさっとくるところの多い本でした。今現在、働くことで迷っている人にとって明快な救いの手を差し伸べる本ではありませんが、いわゆる「自分探し」のストーリーではありながら「自分探し」特有の(?)いやらしさや「好きなことを見つけようよ!」という押し付けもなく、淡々と描かれているところが気に入っています。迷うのも、逃げるのも、人生の一部です。自分自身や自分の置かれた状況を、自分からちょっと突き放して見つめるためのきっかけになるような気がしてオススメしてみました。

はすぬまがまよさんのプロフィール

はすぬまがまよ
沼系フリーランサー。得意科目は平泳ぎ。
「蓮の葉の 足場は悪いが 気にするな 落ちたら落ちたで スイスイ泳ぐ」