太安萬呂『古事記』・個人事業主 金田あおいさんオススメ

おすすめ本 File 039
「20代の、等身大で生きたい人たち」へ

金田あおい

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<どんなことについてかかれた本ですか?>
神々が日本を創世したいきさつから、推古天皇の時代までに繰り広げられた様々な出来事が書かれたものです。

<ご自身にとってこの本はどんな本ですか?>
古事記(フルコトフミ)は、口頭で歴史を語り継ぐっていう技を連綿と繋げてきた人間国宝的な人々の芸術(無形文化財)がだんだんと廃れてきたのに危機感を感じた天武天皇が、

「それはもったいない、今、いろいろな口頭伝承がばらばらに語られているが、
無くなる前に精査してまとめ、それを語れる者を育てたい!」

と稗田阿礼を召して学ばせたことに端を発しています。

「フルコト」は、記録に主眼を置いた歴史書(例:日本書紀)ではなく、音の繋がりや抑揚までを表現に含めた、語りの芸能です。
しかし継承者がいよいよ育たなくなり、最終的に元明天皇の時代には最後の伝道師稗田阿礼も高齢になってしまいました。
そこで、太安萬呂に命じて阿礼の語りを文字に落とし込んだものが「フルコトフミ(古事記)」です。
つまり、書物として編纂されたのは約1300年前ですが、それ以前の何百年にも渡って
——-文字がない時代に——、人から人へ語り継ぐという方法で、歴史を後世に伝えた人たちがいたというところに、私は強く惹き付けられました。

人間のたぐいまれな記憶力、集中力、表現力が、何世代にも渡って繋げられたこと、そしてそれを記録した書物を今生きている私たちが読めるという驚きの連鎖。
その最先端にいる私たち。そんな風に思えて、逃げたくなるようなことがあってもつま先は前を向けて、日々真摯に学んでいきたいと思える本です。
また、神話の内容は私たち人間と同じく喜怒哀楽に満ちており、日本の神様は勧善懲悪・聖人君子的な方々ではないのだなと妙に身近に感じます。
そのおかげで、人生の学び場で生まれる私たちの苦しみや悲しみを、同じ目線で感じて包容してくださるような安堵感を覚えます。
自分を大きく見せようなどと背伸びをせず、今の立ち位置を肯定してそこからすこしずつ前に進んでいけたらいいよね、と勇気をくれる本でもあります。

<最後に、若者たちへのエールを!>
私は35歳をすぎて、人と比べながら生きることの無意味さを痛感し、自分が生きている不思議をありがたく感じるようになりました。
人生の舞台で戦っている相手は他人ではなく、自分。
今の自分の弱さを受け入れた上で、明日は一ミリでも前にすすめたらいい、そんな気持ちを持つに至ってようやく日々を楽しいと思えるようになったところです。
歴史を知ることは、自分の思い込みの枠を外していく作業に繋がっているように感じます。
「~ねばならない」「~べき」「当然~のはず」と心の中でつぶやくとき、そこには過去、自分が捕われてしまった何かがあります。その縄をみつけてほどいていくと、つらい、悲しい、こわい、不安だ……と縛っていたのは自分自身だったと気付きます。
他人を変えることはできませんが、縛っているのは自分なのですから、気付けば必ず自由になり、本来の自分に戻れます。
なあんだそうだったのか、と目から鱗が落ちるとき、過去のすべては「必要なものだった」と輝きます。
人生に、必要でないものはありません。歴史を知り、等身大の自分を笑いながら、ともに前を向いていきましょう!

金田あおいさんのプロフィール

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個人事業主。文化財に関するDTPデザイン、グッズや衣装の製作&販売。
大学・大学院にて考古学を専攻。歴史学や考古学の研究者や研究成果と一般の方とをつなぐパイプ役になることを志し、卒業後専門学校に入学、デザインを学ぶ。
2009年、個人事業「時代意匠考案 藍寧舎」を設立。歴史が持つ肯定的な側面に焦点を当て、デザイン製作活動を開始。 歴史意匠を用いたグラフィックデザイン、歴史に題材を取った雑貨や服を製作・販売している。
オフィシャルサイト 藍寧舎http://www.ranneisha.com
共同経営ショップ、奈良・旅とくらしの玉手箱「フルコト」にて、歴史を身近に感じたいとの思いで製作したグッズを販売中。
奈良・旅とくらしの玉手箱「フルコト」http://www.furukoto.org